ロスト・クロニクル~前編~


 相手役は、故郷にいる付き合い易い女の子と外見と内面が一緒の子がいい。という部分は、流石にクラスメイトに言っていない。エイルは「いい子を捜す」と言い、メルダース中を歩く。

 途中、クラスメイトは自分の好みの相手を語っていく。彼等も健康的な男の子なので、彼女が欲しいのだ。エイルがヒロイン役を捜している中で、自分達も好みの相手を捜そうと躍起になる。

 だが、肝心な部分は忘れていない。今回の演劇の件は、テスト免除という大事が掛かっているからだ。

 主役とヒロインが、気分良く演じないと全体的にバランスが悪い。何せ一番目立つのだから、勝手にヒロインを決めるという我儘を周囲が受け入れてくれた。そして、協力するという。

「彼女は?」

「金髪は?」

「違うか」

「黒髪だね」

 演劇の件とエイルがヒロイン役を捜しているということは、メルダース全生徒の耳に届いているので、自分がヒロインになりたいと必死にアピールしていく。しかし全ての生徒が、同じ考えを持っているのではない。一部の女子生徒は、ヒロインを演じ目立ちたいと思う。

 舞台女優は、女の憧れ。一生に一度、体験できればいい方だ。それに、最高峰と謳われるメルダースで演じる。多くの女子生徒が綺麗な衣装に身を包み、演じている姿を想像し別の世界へ意識を飛ばす。

「皆、別の意味で盛り上がっているな」

「テスト免除は、大きいよ」

「あと、学園長が喜ぶ。学園長が機嫌がいいと、学園が平和だからね。教頭先生が言っていた」

「教頭先生も、苦労しているからね。テスト免除の外に、教頭先生の為に頑張るってどうだ?」

「それいいな。よし、衣装を作る」

「お前、裁縫できたのか?」

「馬鹿にするな! 綻んだ服を自分で直しているんだぞ。だから、いつの間にか上手くなった」

 多少不安を感じてしまうが、生徒全員が頑張らないと成功しない演劇。其処まで言うのなら任せてもいいもいいが、衣装作りは一人でできるものではない。他にも裁縫を得意としている人物を集めないと、時間ばかり掛かってしまう。ヒロイン捜しと同時に、此方も捜さないといけなかった。