「何で、彼なのよ」
「絶対に反対」
「バゼラード君がいいわ」
「そうよ。彼は、気持ち悪い」
どの言葉もラルフの身体に突き刺さり、抉っていく。だがエイルの毒吐き攻撃よりは緩やかなので、ラルフは何とか踏み止まる。しかし表情は徐々に強張り、エイルに助けを求めた。
「いいと思うけどね」
「だよな」
「ラルフでいいじゃないか」
「駄目よ。私達はバゼラード君が主役だから、ヒロインの座を狙おうとしているのよ。わかってほしいわ」
その言葉に、多くの女子生徒が一斉に頷く。これは絶対に譲れないのだろう、ラルフは許さないと言い続ける。流石に複数の女子生徒から言葉の攻撃を食らうと、ラルフの件は却下の対象となる。
だがエイル自身が役を演じるとなると、最大の難問のキスシーンをどうにかしないといけない。
両腕を組み、どうすればいいか悩みだす。彼自身、相手がマナであったら素直に受け入れていた。それだけ、マナという女性を気に入っていた。しかし、彼女を呼び出すのは不可能だ。
なら――
自分で選べばいい。
マナに似ている人物を。
それをどのように切り出せばいいのか。メルダースの生徒はエイルが好意を抱いている相手がいないと思っているので、ここで言葉を間違えればおかしな噂となって広がってしまう。
ラルフの馬鹿騒ぎで苦労しているのに、これに恋愛関係が加わったら平穏な学園生活がぶっ飛ぶ。しかし女子生徒はエイルの気持ちを察していないのだろう、籤引きの箱を作り出す。
「そ、それって……」
「勿論、籤引き。メルダース全員の生徒が対象よ。そうしないと、不公平になってしまうもの」
それを聞いた瞬間、顔が引き攣ってしまう。こうなると、本当に言い難い。それに籤引きで当たりを引いた人物が、ヒロインになってしまう。その相手を気に入らなかったらどうしようかと、真剣に悩む。するとエイルは意を決し、自身の考えを伝える。それも、同性のクラスメイトに――


