彼等は、女子生徒の意見を受け入れた。しかし反撃の意味で、ラルフに貴族の役を与えた。
これを知ったら、何と思うか――
だが、これはこれで面白い。
「大まかなストーリーは、愛だ! 王子と侍女の恋愛話にしようと思っている。勿論、彼女達の依頼」
「恋愛……苦手だ」
「そう言わない」
「で、キスシーンってあるのか? さっき、それらしき話をしていたが……あれは、嫌だね」
エイルにしてみれば好意を抱いている相手以外とキスなどしたくなかったので、この辺りはハッキリとしたかった。しかしエイルの気持ちと裏腹に、台本を書く生徒は「入れる」と言う。
それを聞いた瞬間、物凄い脱力感に襲われる。まさか、本当にキスシーンが入るとは――全力で否定した。
「断る」
「何で」
「こういうのは……」
しどろもどろで話しているエイルに、クラスメイト達は腹を抱えて笑い出す。初で可愛らしいその態度は、いつもの真面目なエイルは明らかに違う。その為、周囲はからかい面白おかしい言葉を言っていく。
何事も完璧にこなしていくエイルの意外な一面。それはいいからかいのネタと化していく。
「しないといけない?」
「勿論」
「じゃあ、ラルフにパス」
「えっ! いいの?」
「うん。宜しく」
「わーい、嬉しいな」
好意を抱いていない相手とキスするくらいなら、主役の座を下りた方がいい。それに好き好んで主役の地位に就いたのではないので、エイルは簡単に主役を捨ててもいいと思っていた。
一方主役の座が転がり込んでくるラルフは、両手を上げて喜ぶ。まさか、自分が主役の地位に就けるとは――全ての幸福が、一気に舞い込んだ状態だった。しかし簡単に就ける役でもなく、何より女子生徒が許さなかった。今までの話を聞いていたのだろう、彼女達から抗議が飛ぶ。


