突然の問題児の登場に話し合いを行っていた生徒達が、一斉にラルフの方に視線を向けた。
そして、一言尋ねる。
「何?」と――
「役の件だ」
「ああ、それか」
「そうそう。お前にいい役があるんだよ。貴族の役って、どうかな。似合うと思うんだよね」
予想外の切り返しに、ラルフは間の抜けた表情を作る。一方エイルは、学園中に響く絶叫を上げていた。
ラルフが、貴族役。
正直、信じられなかった。
エイルはラルフの前まで歩み寄ると、どうしてこのような役を与えたのか聞く。すると、彼等は言う「面白い」と。
それにラルフは弄られ役と定着してしまっているので、それでは不憫ということでたまにはいい思いをさせてやりたいという、何だか物凄く裏が感じられる心遣いが関係していた。
しかしエイルは、それを指摘することはしない。横で小躍りして喜んでいるラルフの姿が、目に入ったからだ。
「聞いたか」
「聞いたよ」
「貴族様だ!」
「凄いね」
「エイルと張り合える」
「で、台詞はきちんと覚えるんだぞ」
その鋭い指摘に、小躍りしていたラルフが止まった。どうやら、肝心な部分を忘れていたらしい。だが決まってしまった役なので、長い台詞も頑張って覚えないといけないのだった。
「頑張れ」
「手伝って」
「無理。台詞は、自分で覚えろ。ところで、役が決まったのか? 貴族が登場するってことは……」
エイルの質問に台本を書くと名乗り出た生徒が答えていくが、何処か声音が震えている。どうやら女子生徒のパワーに圧倒されたのだろう、精神面が疲弊していた。そして貴族の登場も、女子生徒の意見が反映されているという。この瞬間、ラルフが貴族役に決定した意味を悟った。


