エイルは、我が耳を疑う。
そして、再度聞き返していた。
「主役やりたい」
「王子様だよ」
「おお! いいじゃん」
エイルが言う「王子」という単語に過度に食い付いてくるが、ラルフが王子――冗談ではない。
エイルは無謀にも、ラルフの王子姿を想像してしまう。してはいけない想像というのは、想像を行なった者の精神の崩壊を招く。エイルはその場にしゃがみ込むと、吐き気を堪えた。
「気持ち悪い」
「風邪か?」
「違う。お前の王子姿を想像したら、気持ち悪くなったんだよ。全くに、似合わないんだよね」
「そこまで言う」
「言うよ」
鋭い切り替えしにラルフは何も言えなかったが、主役を演じたいという気持ちが彼を突き動かす。しかし、残念なことに主役は決まっていた。そのことを伝えると、ラルフは崩れ落ちる。
「どうして、エイルばっかり……」
「文句なら、言ってくるといいよ」
「誰に?」
「多くの女子生徒」
「くそー、いつもいつも」
エイルの言葉にラルフはスクっと立ち上がると、女子生徒の面々に文句を言いに行くと言う。
まさか本気で文句を言いに行くとは思わなかったエイルは、何度も本当に行くのか尋ねる。だが彼の気持ちは本当で、今回の主役の件を抗議し自分が主役の座に就けるようにするという。
どうやら今まで体験した理不尽な仕打ちを、何とかしようと思っているらしく自身に気合を入れていくが、あの女子生徒のパワーを目の当たりにしたらラルフは数秒ともたないだろう。
彼女達のパワーを知らないラルフは拳を突き上げると、演劇の計画を練っている生徒達のもとへ走って行く。エイルは最初から結果はわかっていたが、面白いので見守ることにした。そしてラルフの後を追い掛けると、遠巻きでラルフの無謀な行動を見学しているのだった。


