「本気ですか?」
「勿論よ」
「皆、素人です」
「それがいいじゃないの」
「教頭先生、僕は……」
クリスティの発言に、エイルは動揺を隠し切れなかった。彼女が提案した内容――それは演劇を開催しようというものであったが、簡単に受け入れられる内容ではないので、エイルは絶句する。
「街の者も呼びましょう」
「学園長! 唐突に、どうして……」
「面白いから。それに、たまにはこういうのもいいでしょう。気分転換よ。テストの代わりね」
彼女の何気ない一言に、エイルは過敏に反応する。「テストの代わり」これほど、魅力的な言葉はない。成績優秀の生徒であっても、テストの重圧は半端ではないからだ。これを免除できるのなら、演劇でも何でもやってしまう。それはエイルだけではなく、全生徒が言うに違いない。
エイルは背筋を伸ばすと、瞳を輝かせクリスティに視線を向ける。完全に「テスト免除」という言葉に魅せられていた。
「二回免除よ」
「頑張ります」
「あら、楽しみ」
「早速、クラスメイトに言います。では、失礼します」
クリスティに向かい深々と頭を下げると、エイルはいそいそと部屋から出て行く。その姿に、ジグレッドは長い溜息を付く。
まさか、こんなことになってしまうとは――だが、内心彼も面白いと思っていた。しかし立場が立場なので、それを口に出すことはせず裏方に回ることにした。そして、メルダースの教師と生徒を巻き込んだ演劇の準備が開始された。勿論、クリスティは傍観者だった。
◇◆◇◆◇◆
「本当か!」
クラスメイトの第一声は、これであった。誰もが同じ反応を見せ、驚き戦く。演劇を催す――別に、これはどうでもいい。彼等が驚いているのは「テスト二回分が免除」の部分だった。メルダースの生徒にとってこれほど魅力的な言葉はなく、全員が演劇の成功の為に一致団結する。


