「私の名前も、まだまだね」
「いえ、そのようなことは……」
「あら、あの馬鹿は知らなかったわ」
「……多分、特別です」
エイルの言葉に同調するように、ジグレッドが頷く。彼を世間一般の人物と一緒にしてはいけない。そもそもクリスティに裏口入学を持ち掛ける時点で、命知らずといってよかった。
そんな馬鹿が公子をしている国から影響を受けているクローディア。勿論ミシェルの力ではなく、彼の父親の力が関係している。あの親にしてどうしてあのような子供が産まれたのかと思うほど、能力面の差が大きい。誰もそれを口にしないが、多くの者が思っている。
その中の一人がクリスティ。
だからこそ、エイルに質問した。
「メルダースに、興味を持っていました」
「あら、そうなの」
「学園長先生が話した時と、全く変わっていません。というか、変わる気配が見受けられません」
「それはいけないわね。また来たら、今度は本当に魔法をぶっ飛ばしてあげましょう。楽しみ」
「……止めて下さい」
「冗談よ」
「冗談に、聞こえません」
彼女の冗談は本当に冗談と取れない時があるので、油断できない。何事も気分次第で、気に入らない相手の場合は徹底的に痛め付ける。そして彼女が魔法を使用すると、メルダースの建物が全て崩壊してしまう。あの破壊神の異名を持つラルフ以上の悲劇が、訪れるに違いない。
エイルはクリスティの発言に、苦笑いを浮かべる。一方ジグレッドは、やれやれと肩を竦めていた。
二人とも、反論の言葉は言わない。言ってしまったら、自分の寿命を確実に縮めてしまう。それに反論は無意味とわかっていながら敢えて行うのは、馬鹿と呼ばれる者がやることだ。味方の場合は最高なのだが、敵に回すとこれほど厄介な相手はいないというのがクリスティという人物。
その言動の数々は、確実に体力を奪い精神を痛め付けていく。エイルとジグレッドの顔には疲労感が表れ、二人は長い間沈黙を続けている。その時、クリスティがいい事を思い付いたのかポンっと手を叩く。そしてどのような風の吹き回しなのか、衝撃的な言葉を発した。


