進化の素晴らしさを力説していくラルフだが、誰も彼の力説に耳を貸そうともしない。中には、欠伸をする生徒もいた。
「説明、長い?」
「というか、くどい」
「じゃあ、簡略的に」
「それも嫌だね。学園長がいれば学園長に、帰ってきたことを報告しないといけないからね」
「終わったら」
「無理。じゃあ、後は宜しく」
「おう! 任せろ」
「いってらっしゃい」
誰もが、この日を待っていといってもいい。エイルの言葉を受けると同時に生徒達はラルフを取り囲むと、一斉に笑い出す。次の瞬間、連続した悲鳴が轟く。それを耳にしてもエイルは、涼しい顔をしている。別に殺されるわけでもなく、彼等は遊ぶだけ。そのことを知っているので、敢えて無視する。
エイルは一定の歩調で歩き、学園長の私室の前へ向かった。過去に数回この部屋を訪れているが、教頭のジグレッド以上の独特の雰囲気が部屋の中から漂う。それは表現し難い常識を逸脱したオーラで、エイルの身体を包み込む。それにより、ねっとりとした脂汗が額に滲む。
久し振りに感じる、この嫌な感覚。しかしクリスティに報告をしないわけにはいかないので、エイルは深呼吸を繰り返し気分を落ち着かせると、扉を叩く。すると数秒後に、返事が返された。
「失礼します」
言葉と共に、室内に入室する。
すると、学園長クリスティの横にジグレッドが立っていた。どうやら、仕事を行っていたらしい。
タイミングが悪かったと思い出直そうとするが、クリスティとジグレッドは温かく出迎えてくれた。
「お帰り」
「は、はい」
「無事で何よりだ」
「お陰様で」
クリスティとジグレッドからの温かい言葉に、エイルの顔から緊張感が薄らいでいく。彼にとって二人は恐怖の対象であると同時に、心から尊敬している人物。その人物からの優しい言葉はとても嬉しく、親衛隊の試験を頑張って受けてきて良かったと思えるのだった。


