そして、毎日真面目に勉強を行っていたという。そして予習・復習を完璧に行い、別人に変化していた。それはそれで素晴らしいことなのだが、周囲にしてみれば面白みに欠ける。
やはり、ラルフのあの悲鳴を聞きたい。そして日常の一部と化した、ラルフのトラブルの数々。それが急に無くなってしまうと、体調が悪くなり風邪をひいた者が続出したという。
また、成績が落ちた生徒も存在する。結果、多くの生徒がエイルの帰りを心待ちにしていた。しかし、一部の生徒――ラルフは違う。今彼の顔は真っ青で、口から魂が半分抜けていた。彼の姿にエイルは、苦笑してしまう。そして一言「苛めないといけない」と、言った。
「おっ! 本当か」
「そうしてほしいだろう」
「勿論」
「じゃあ、早速」
「い、嫌だ」
勿論、ラルフは全力で拒否反応を示す。今まで規則正しい生活を送っていたので、耐性が緩んでしまっている。その中で関節技を掛けられたら、全身粉砕骨折をしてしまう。だが、周囲の者達は全く気にしていない。それどころか「早くやって欲しい」と、煽っていた。
一方エイルも、やる気満々。彼はボキボキと指を鳴らすと、悪魔のような笑顔を作っていた。
「し、死ぬ」
「手加減はするよ」
「エイルがそういう時は、本気だ」
「あれ、わかった」
その瞬間、ラルフの時間が止まった。
一体、どれくらい時間が経過した後か、メルダースの建物中にラルフの甲高い悲鳴が響いた。
「あっ! いつものラルフだ」
「やっと、もとに戻ったね」
「これで、体調が良くなる」
「成績も上がるぞ」
ラルフが関節技を掛けられている光景を眺めていた面々は、口々に感想を述べていく。それだけラルフには、新鮮なネタを提供して欲しかった。なんだかんだで、フランソワーやマルガリータの件を周囲は楽しみ、笑いのネタをしていた。また、一服の清涼剤といってもいい。


