メルダースに帰宅前、エイルは雑貨屋に立ち寄っていた。その理由というのは、今まで散々我儘を言い身の回りの世話をしてもらったマナに贈るプレゼントを購入する目的の為だ。

 十代の女の子に贈るプレゼントは、何がいいのか。並べられている品物を眺めつつ、エイルは考え込む。

 生憎エイルは、恋愛に長けてはいない。どちらかというと、ラルフがこのような面に長けていた。しかし「無理」と言ってプレゼント選びを諦めると、マナと約束を破ってしまう。

 悩みに悩んで彼が最終的に選び出したのは、可愛らしい形をした牛の縫いぐるみであった。

 彼が購入する縫いぐるみのサイズは、雑貨店で売っている中で一番大きい物。それ相応に値が張るが、思い切って購入すると綺麗に包装してもらい、赤いリボンで袋を結んで貰った。




「プレゼント」

「えっ!?」

 エイルからのプレゼントに、マナの身体は硬直してしまう。まさか本当にプレゼントを渡してくれるとは思わなかったらしく、どのように反応していいか迷う。しかし受け取らないわけにはいかないので、マナは震える手を伸ばすとエイルからのプレゼントを快く受け取り、礼を返す。

「良かった」

「大切にします」

「開けていいよ」

「はい」

 だが、なかなか上手く袋を開けることができない。エイルに見られて緊張しているのか、手が震えてしまいリボンを解くのもままならない。見兼ねたエイルが代わりに封を開け、縫いぐるみを取り出す。

「可愛いです」

「これでいい?」

「はい」

 女の子がこれを贈って喜ぶか心配していたエイルであったが、相手のいい反応にホッとする。やはりプレゼントを贈ったからには、相手には喜んでほしいもの。可愛らしいマナの笑顔に、徐々に口許が緩んでいく。一方マナは、縫いぐるみを両手で抱き締め顔を埋めた。