「ほら、食べる」
「はひ」
「咀嚼」
急に、口調の中に命令形が入る。
マナは軽く頷くと、何度も咀嚼を繰り返す。
ジャガイモの甘味と、バターの独特の風味。その両方が上手い具合に混ざり合い、表情が緩んでいく。エイルが言っていたように、ジャガイモと一緒にバターを食べると実に美味しい。
今まで茹でたままのジャガイモを食べていたマナにとって、新発見と同時に新しい味覚を覚える切っ掛けとなった。嬉しそうに微笑む姿に、エイルも同じように微笑むと自分もジャガイモを食べはじめた。
「こういうシンプルな料理は美味いね。料理人が作る料理も美味しい。勿論、マナの料理もね」
「私は、まだ……」
ジャガイモを飲み込んだ後、小声で呟く。エイルに夜食を作っているので、料理の勉強をしているが腕前は低い。いつか本当に美味しい料理を食べてもらいたいと思うが、それを口にすることはない。
恥ずかしさと苦しさが合わさり、息苦しくなってくる。しかし、それは感情の影響で苦しくなってきたのではない。一気に大量のジャガイモを食した影響で、詰まってしまったのだ。
何度も何度も、胸を叩いていく。
だが、ジャガイモが胃袋に落ちない。
「マナ?」
「へ、平気です」
「顔が赤い」
「本当に……」
自分自身で何とかしようと、何度も胸を叩くがジャガイモが胃袋に落下してくれない。見兼ねたエイルはマナの後方に立つと、ポンポンっと背中を叩き時折擦っていく。エイルの行動により喉に詰まっていたジャガイモが胃袋まで落ち、これにより天国に行かないで済んだ。
「す、すみません」
「御免。無理に食べさせて」
マナに美味しいジャガイモを食べさせないと、無理矢理口に突っ込んだのが悪かった。まさか、それにより喉に詰まらせてしまうとは――しかし、最初から予想が付いたこと。エイルは気まずい表情を浮かべると、詫びの言葉を述べ二度とこのようなことを行わないと約束する。


