「知らないの?」
「うん」
「普段、床掃除を――」
「しているわ。でも、床掃除はモップを使用していることが多いの。だから、雑巾のことは……」
「そうなの?」
語られる日頃の仕事の内容に、ジャネットは首を傾げてしまう。バゼラード家で働いているメイドは、それぞれきちんと仕事場所が割り当てられている。そして一箇所に複数のメイドが就き、仕事をこなしていく。そして割り当てをしているのは、家政婦のリンダであった。
その為、仕事の仕方を知っていてもいい。
なら、どうしてか。
「掃除をしていると、周囲が見えなくて……」
「真面目ね」
「それ、他の人にも言われたわ」
「そんなに気張らなくていいのに。それが、マナの悪い部分かもしれないわ。もっと、気楽に……ね」
「う、うん」
「じゃあ、雑巾の使い方を教えるわ」
「お願いします」
「もう、本当に真面目ね」
ジャネットの考えは正しい。現に、バゼラード家で働いているメイドの中で、一番真面目に仕事を行っているのがマナだった。ジャネットはモップを壁に立てかけると、目の前で雑巾を開く。
そして、丁寧に説明していった。
ふと、疑問が湧く。
ジャネットは、躊躇うことなく言葉を出した。
「まさか、他の人達がサボっているの」
「それはないわ」
「本当?」
「本当よ」
必死に「違う」と、何度も言っていく。
見方によっては仲間を庇っているように思えるが、ジャネットの経験上相手が嘘を付いているとは思わない。それに、バゼラード家のメイドは評判がいい。またマナの真面目な性格を考えると、嘘を想像し組み立てることを得意としていない。なら、言っていることは正しいと判断する。


