大きく息を吐くと、エイルは口を開く。
「いつですか」
「明日だ」
「今日だと思っていました」
「それは無理だ。大神官殿に、許可を得ないといけない。それに、お前の体調も悪いからな」
「……すみません」
「謝るのなら、早く治せ」
「……はい」
流石に、最後の言葉は利いた。エイルは項垂れ、それ以上の言葉を発することができなかった。
しかし、これはこれで好都合。
フレイは沈黙を続けている息子に向かい、言葉を続けていく。勿論、嫌味や愚痴ではない。国の将来と向かうべき道。また、内情と現状。多くが望む未来。エイルは鉛のように重い言葉を、無表情で聞いていった。
◇◆◇◆◇◆
エイルの私室から出て行ったマナは、床掃除を行っていた。当初真面目に仕事を行っていたが、彼から受け取った物を思い出したのだろう、エプロンから一枚の紙を取り出し開く。
書かれた文字に目を通す。
その瞬間、赤面してしまい頭が混乱していく。
廊下に立ち尽くす。すると不可解な行動を疑問に思ったのかか細い悲鳴を上げ、自分の名前を呼んだ相手を見る。
「ジャネット」
そのように名前を呼んだ相手は、マナの親友。年齢は彼女より三っつ上の同じメイド仲間だ。
「どうしたの? 大声を出して」
「だって、いきなり呼ぶから……」
「御免。でも、真剣な表情でどうしたの?」
「ちょっと……ね」
オドオドした態度で、親友の顔を見る。相手は年上ということで、外見は大人っぽくスタイルがいい。それに毎日手入れをかかしていないのだろう、長い茶色の髪が美しい。またクリクリとした黒い双眸は愛嬌が含まれ、仲間達だけではなく街の人達からも人気が高い理由を再認識する。


