ロスト・クロニクル~前編~


 そもそもの原因は、エルバード公国の方にあった。フレイは強い口調で、それを言っていく。

「希望は、失われてはいけない。お前は力を蓄え、未来に備えろ。それが、最大の役割である」

 父親の言葉に、エイルは無言で頷く。

 力を付ける為に、最高峰と呼ばれているメルダースで学問を学んでいる。尚且つ、クリスティの信頼も高い。これほど心強いことはなく、ある意味クリスティの信頼を得る為に頑張っているといっていい。

 フレイは、クリスティに力を貸して欲しかった。巨大な相手に立ち向かう場合、それに匹敵する力が必要となるからだ。相手は一国の王も跪く人物。これ以上の味方は存在しない。

 しかし、結果は出ていない。

 まだ、卒業をしていないからだ。

 エイルは目を閉じ、自身の未来を考えていく。

 メルダースを卒業し、親衛隊の一員となり王家の盾として働く。全ては、国の未来の為――

「同士は少ない」

 勿論、わかっている。

 どちらかといえば、周囲は敵の方が多い。フレイ曰く、表立って動ける人物が限られているからだ。

 敵側に寝返った者は、莫大な権力を有している敵国を後ろ盾に、好き勝手に振舞っている。

 フレイは、それが気に入らなかった。今までクローディア王家の世話になってきたというのに、今は敵国の力で自国を蹂躙(じゅうりん)する。まさに、恩を仇で返した者達の集まりであった。

「エイル」

「……はい」

「声が出せるようになったか」

「……少し」

「そうか」

 元々は、自業自得が招いた出来事。息子が声を取り戻しても、顔面の筋肉を動かし喜ぶことではない。

 現在、真面目な話をしているので其方に集中し、国の内情をわかってもらわないといけない。フレイは冷静に、話を続けていく。親衛隊の一員になった今、特別扱いはしてはいけない。以前は「まだ早い」と、内緒にしていた。しかし今は味方として、フレイの手足となって動かないといけない。