無表情で、息子の顔を見詰めるフレイ。一方エイルは父親から発せられる張り詰めるオーラが身体に突き刺さり、心地がせず完全に針の筵状態に近い。また、顔が徐々に青ざめていく。
現在、言葉が出ない。だが言葉が出たとしてもこの雰囲気の中で言葉を発するのは、自滅を招く。
その為、耐え続ける。
一体、どれくらい時間が経過したのか。
三十分、一時間。
いや、感覚的にもっと長く感じる。
ふと、咳払いが響く。
それに続き、フレイが口を開いた。
「今回の出来事を、とやかく言うことはしない。日頃、頑張っているということは聞いている」
父親の評価と意見に、エイルは全身から力が抜けていく。剣の練習で惨めな部分を曝け出し、解熱剤の大量摂取で医師を呼ぶ。これだけでフレイの逆鱗に触れてしまうが、怒る様子を見せない。フレイがやって来た理由――それは、今後に付いての話をしたかったからだ。
「卒業は可能か」
「……うん」
「それならいい」
フレイも、言葉の強弱で息子が言いたい言葉の意味を判断していく。王室親衛隊の一員になった今、何が何でもメルダースを卒業しないといけない。勿論、留年は不可であり留年が決まった瞬間、親衛隊の一員の地位を剥奪されてしまい、フレイはそれを危惧していた。
それにより、ついつい語尾が荒々しいものになってしまうが、それは仕方がないことだった。
全ては、一族の名前の為。
「メルダースを卒業してから話そうと思っていたが、時間が惜しい。今から話すことは、一部の人間しか知らない。お前は親衛隊の一員となり、王家の盾となる。だから、知らないといけない」
其処で一旦、言葉を止める。
「これから語ることは、お前の将来にも関わる」
「将来」という単語に、エイルは過敏に反応する。これから先、自身の身体は自分の物ではなくなる。名前を背負い、生きていかないといけない。フレイに言われ改めてそれを自覚すると、エイルは目を閉じ今までの出来事を思い出していく。刹那、胸が強く心臓が締め付けられた。


