言葉は厳しい。
しかし、裏側には愛情が含まれていた。兄の言葉にエイルは、首を振って回答を示していく。
その反応に最初は苦笑していたが、徐々に表情が緩やかなものへと変化していった。そして最後は、笑い出す。
「本当に、お前は……」
それが、イルーズの本音だった。
すると今度は、シーナが言葉を掛けてくる。彼女の第一声は、息子を心配する言葉であった。夫のフレイと息子のイルーズとは違い、涙混じりに語る姿はエイルを更に動揺させた。
彼女の予想外の態度に、エイルだけではなくフレイとイルーズも驚く。いや、彼等だけではない。側に佇んでいたリンダとマナもどのように反応していいのか迷い、視線を周囲に泳がしている。
部屋の中に響く、シーナの声音。
ただ他の者達は、沈黙を続けるしかできなかった。
数十分後――メイドが呼びに行った医者が、バゼラード家に到着する。医師の診断は長時間掛かると予想していたが、意外にも短時間で終了し、診断結果は「薬の飲み過ぎ」という、何ともわかり易い結果だった。
舌が痺れているので飲み薬を飲むのは辛いということで、腕に注射をうたれてしまう。エイルは注射を嫌っているわけではないが、といって好きではない。それにより、注射をうたれると同時に寝台に横になってしまう。
「エイル様」
「うん?」
「具合は、どうでしょうか」
「うーん、うん」
「それなら、いいのですが」
「うん」
オドオドした態度で、マナは質問を繰り返す。しかしエイルからの返事は「うん」の言葉のみ。
それでも、マナは理解していた。
雰囲気と声音の強弱。それらを総合して、判断を下していたのだ。相手からの反応に、ホッと胸を撫で下ろす。医師の診断を受けている最中、心配で仕方がなかった。「解熱剤の影響で、悪い病気に発展して……」と悪い方向に想像が働き、顔から血の気が引いていたのだ。


