ロスト・クロニクル~前編~


 エイルを他所に、話が勝手に進んでいく。

 それをムスっとした表情を浮かべつつ、リンダ達の行動を静かに見守るしかできなかった。

 勿論、反論したい。

 しかし無駄と判断したのか、不貞腐れ寝台に横になった。

 数分後――

 先に部屋を訪れたのは、両親とイルーズ。

 自身の父親の顔を見た瞬間、一瞬にして血の気が引く思いがした。そして、反射的に身構える。

「何をしている」

 刺が大量に含まれている言葉に、エイルの身体が微かに反応を示す。内心「何か言わないといけない」と思うが、現在の状態で言い訳に近い言葉を言うことはできない。ただ、沈黙が続く。

「そんなに、悪いのか」

 フレイはメイドの話を聞いているので、息子の症状を理解している。しているが、忠告の意味で鋭い言葉を発する。

 彼の意見としては、メルダースという最高峰の学園で学問を学んでいるのだから、高い洞察力と観察力、そして尚且つ判断力と危機感を有していてほしいと期待を込めて、見下す言葉を放った。

 彼も悪魔ではない。

 息子は可愛い。

 身体が心配。

 表情は常に無を作っているが、心情は異なる。

 それを強く出しているので、母親のシーナ。エイルが倒れたと聞いた時、心臓が止まる思いがしたという。そして今回の解熱剤の大量服用により、舌が痺れまともに声を発することができなくなった事件。

 本来の意味ではエイルの自業自得なのだが、シーナは我が身が引き裂かれたように捉え、オドオドと先程か落ち着きがない。彼女は夫の言葉を遮るかたちで、何度も「大丈夫」と繰り返し、症状を確認してくる。普段は淑やかで落ち着きを放っているシーナの態度に変化に、エイルは視線を逸らしていた。

 母親を心配させた。

 その思いが、心臓を鷲掴みにする。

 決して母親に執着心を示しているのではないが、肉親――特に母親に昔から迷惑を掛けているので、今にも泣きそうな表情を見ていると居た堪れなくなってしまい、視線を合わすことができない。表現し難い空気が、部屋の中に充満する。すると、それを払うかのようにイルーズの声音が響く。