だが、無理が祟る。
それに大量に飲んだ解熱剤の効果が今出てきたのか、視界がグルグルと回り後方に倒れた。
「エイル様!」
「へ、平気」
「呂律が回っていません」
「ふえ?」
確かに、舌が微かに痺れている。先程、重い副作用がないと判断を下していたが、どうやら見誤ったらしい。瞬時に、シマッタという表情を浮かべる。しかしそれが更に、不幸を招く。
何と、マナが泣き出したのだ。
まさに、踏んだり蹴ったりというべきか。エイルは身体を起こすと呂律が回らない声音で泣き止むように説得するが、マナが泣き止むことはない。それどころか、嗚咽まで漏らしはじめた。
部屋の中に響く、エイルの声とマナの泣き声。
勿論、廊下にもれていた。
その声を聞き付けたリンダが、数人のメイドを連れ部屋に入ってくる。そして、目の前の状況に理由を尋ねた。
「リンダ様、エイル様が……」
「どうかしたの?」
「呂律が……」
「呂律?」
「その……解熱剤の影響で……」
断片的な言葉に、リンダは首を傾げる。だが次の言葉に、マナと同等の動揺を見せていた。
「エイル様」
「いや、何とか……」
「ご無理は、なさらないように」
「……うん」
呂律が回らない今、長い会話は不可能だった。言いたいことが言えないことにもどかしさを感じるが、リンダは心情を一瞬にして感じ取ってくれた。その為先程の動揺は一変、瞬時に冷静さを取り戻す。
引き連れてきたメイドに、リンダはテキパキと指示を出していく。まずはこのことをバゼラード夫妻とイルーズに報告し、医者を呼び適切な診断を受けること。勿論、エイルは唸り声を上げ抗議していくが、リンダが聞き入れることはない。それだけ、重大な症状と判断したようだ。


