ロスト・クロニクル~前編~


 それを一気に飲んでしまった

 一瞬にして、血の気が引いく。

「……忘れていた」

「どうしましたか」

「水……欲しい」

「はい」

 エイルの言葉にマナは慌てて水差しからコップに水を注ぐが、並々と注いだ結果、手渡す時に中身が少しこぼれてしまうが、細かく文句を言う余裕がないエイルはコップを受け取ると一気に飲み干す。

 しかし急いで飲んだ結果、水は悪い方向へ流れてしまう。エイルは何度も胸を叩き、咳き込む。

 見兼ねたマナは、背中を擦る。するとそれがいい方向に働いたのか、徐々に落ち着きを取り戻す。

「……有難う」

「いえ」

「油断した」

「平気……ですか」

「うん? この薬なら、重い副作用はないと思うけど……使われている薬草がわかれば、いいけど……」

「それで、わかるのですか」

「授業で、調合したことがあるから」

「凄いです」

「普通だよ」

「メルダースでは、普通なのですか?」

「まあ、殆どの生徒というか……全員が勉強をしている。僕は専攻が魔法だから、深い部分までは勉強してはいないけど」

 それを聞いたマナは、エイルに尊敬の眼差しを向けていた。彼は最高峰の学び舎で一流の学問を学び、魔法の練習をしている。また、薬の調合の仕方も勉強し普通に行っているという。

 メルダースに在学している時点で比べることが間違っているが、マナはついつい自分自身と比べてしまう。それは、ある意味仕方がない。このように、高い能力を見せ付けられるのだから。

 徐々に変化していく、マナの表情と態度。瞬時に彼女が自己嫌悪に陥っていると判断したエイルは、懸命にあれこれと言葉を掛けていくが逆効果を生み出してしまう。だが、エイルも諦めなかった。自身の体調は二の次という雰囲気なのか、必死にマナに言葉を掛けていく。