「一体、どうして僕が……」
「覚えていないのですか?」
「父さんと剣で練習していたことは、記憶があるけど……それ以降の記憶が、全くないんだ」
「エイル様は、高熱で倒れたのです。その後、メイド達に運ばれまして、その……私が……」
後半に向かうにつれ徐々に声音が小さくなっていくが、エイルの耳にはマナが言いたい内容は届いていた。
それに彼女が自分の部屋にいるということは、話の内容から看病をしていたということがわかる。また彼女の性格を考えると勝手に立ち入り、床で寝ているということは絶対にない。
エイルは、彼女に素直に礼を言う。
それは、本心の部分で感謝していた。また、同時に迷惑を掛けてしまったということも詫びる。
「いえ、それは……」
エイルの感謝の言葉に、しどろもどろになってしまう。彼女自身、メイドとして世話役として仕事を全うしているだけであって、特に礼を言われることではない。それだというのに、エイルは感謝の言葉を素直に言ってくる。それを聞いていると心がざわめき、再び締め付けられていく。
そして、赤面してしまう。
どうして、このように意識してしまうのか。
自問自答を繰り返すが、明確な回答が導き出されることはない。それどころか考えれば考えるほど混乱し、まるで蜘蛛の糸に絡み取られたようになってしまい、悪循環に陥ってしまう。
しかし「仕事をしないといけない」という気持ち湧き出し、マナは解熱剤をエイルに突き出していた。
「これは?」
「解熱剤です」
「ああ、有難う」
「リンダ様が、お持ちになって……」
「なるほど、用意がいいね」
「早くお元気になって下さい」
彼女の言葉に頷き返すと同時に、エイルは解熱剤の瓶の蓋を取る。そして何の躊躇いもなく解熱剤を一気に飲み干してしまうが、途中で肝心な部分を思い出す。この解熱剤は、今のように一気全て飲みしていい薬ではない。何より一定の分量で、十分効果が得られるのだ。


