「エ、エイル様」
だが、寝台にエイルの姿がなかった。そのことに動揺するマナはオロオロとしてしまい、頭が混乱していく。その結果思考は悪い方向へ働き、どんどん悪い内容ばかりが浮かんでくる。
それにより、とうとう泣き出してしまう。この時、彼女が考えたのはエイルの家出であった。
その時、部屋の扉が開かれた。そして開かれた扉から入室してきたのは、マナが捜している人物エイル。
部屋の中で大量の涙を流しているマナの姿に、エイルは目を丸くしてしまう。一方マナはエイルが見付かったことに胸を撫で下ろすが、一気に緊張感が緩んだのか更に大粒の涙をこぼす。
部屋の中に響き渡る、マナの泣き声。彼女の突然の変貌に、エイルは何度も「どうしたの」と、尋ねていた。
しかし、マナは何も答えない。
ただ、泣き続けているだけ。
「マナ?」
「エイル様」
「本当に、大丈夫?」
「……はい」
震えた声音で、やっとの思いでエイルに返事を返すが、泣いている影響で何処か声質がおかしい。
また、涙は止まっていない。
どうやら捜していた人物の顔を見たことにより、涙が止まらないようだ。だからといって、エイルが感情を露にすることはしない。寧ろ、マナの身体に異常が出たのか心配していた。
「それより、エイル様が……」
「うん? 何」
「お熱は……」
「熱? そういえば、顔が熱いような。それに身体もだるいんだけど……何かあったのかな?」
「ね、寝て下さい」
「あ、ああ」
いまいち事の重大性に気付いていないエイルに対し、マナは立ち上がると彼の背中を押し寝台に導く。急に積極的になったマナの姿に、エイルは返す言葉が見付からない。ただ素直に従い、寝台に横たわる。すると、横たわったエイルの身体の上にマナが布団を掛けてきた。


