「疲労の影響ね」
「そうなのですか?」
「エイル様は、昔から頑張っていらっしゃるから。毎日の勉強と試験。それに旦那様との練習と、色々と重なったのが影響しているのでしょう。エイル様が目覚めたら、連絡しなさい」
「はい」
「それと困ったことがあれば、言いなさい」
「わかりました」
「じゃあ、後は宜しく」
「はい」
リンダはマナに解熱剤を手渡すと、そう言い残し部屋から出て行く。彼女はマナに世話役を任せているので、事細かに何かを言うことはしない。一方マナもそのことを認識しているので、懸命にエイルの世話をしていく。だからといって、医師でもないで彼女がきることは限られていた。
布が熱くなれば水で冷やし、また額に乗せる。
それの繰り返し。
しかしその行為は思った以上に重労働で、マナは何度も深い深呼吸を繰り返し、時折肩を叩く。それでもマナは愚痴をこぼすことなく、与えられた役割――タオルの交換を行なった。
その時、眠っているエイルが身じろいだ。
同じ体勢で眠っていることに苦痛を感じるのか、何度も身体を左右に揺らす。その影響で額からタオルが落ちてしまうが、マナが落ちたタオルを拾いもとの位置へと戻すのだった。
ふと、エイルが呻き声を発した。
「エイル様?」
彼の呻き声に異常を察したマナは、慌てて寝台に横たわっているエイルの顔を見詰め、状況を確認した。
刹那、身体が引き寄せられた。
「えっ!?」
一瞬、何が起こったのかわからない。
だが、徐々に理解していく。
今、エイルに抱き締められていたのだ。
勿論、相手は熱で魘されている中で行っているので、自分が何を行っているのかわかっていない。それどころか、マナが側で看病しているということ自体知らない可能性が高い。彼にしてみれば何か面白い物を捕獲したと思っているのか、腕に籠められる力が徐々に強くなっていく。


