その時、視界が滲む。
一瞬にして血液が足の裏側に流れ落ちたような感覚が襲い、エイルの身体がクラクラと揺れる。
次の瞬間、前のめりで倒れた。
「エイル」
突然の出来事にフレイは握っていた剣を地面に投げ捨てると、エイルの側で片膝を付くと体調を確認する。地面に倒れたエイルの顔は真っ赤に染まり、荒々しい呼吸を繰り返していた。
風邪――
瞬時に判断を下したフレイは、息子の額に手を当てる。
予想は、正しかった。
額が、焼けるように熱い。
「……まったく」
風邪で苦しいというのなら、早く言って欲しいもの。自分の弱い一面を見せない頑固な息子に、フレイは肩を竦めていた。しかし言葉が愚痴に変化することなく、普段厳しく接しようが息子の身を第一に優先する。
今までの光景を目撃していたメイド達に、エイルを自室に運ぶように命令を出すと自身は用いていた剣を片付けていく。そして無表情のまま屋敷に戻って行くが、途中息子の顔を一瞥する。
だが、言葉を発することはなかった。
◇◆◇◆◇◆
マナは、屋敷の中を慌しく駆け回っていた。現在、エイルの世話役は彼女なので、看病をするのは彼女しかいない。その為、大量の水を湛えた桶を抱えエイルの部屋に向かっていた。
エイルの自室の前に行くと、器用に扉を開く。そして桶を抱えつつ、彼の部屋の中に入って行った。
今、エイルは高熱に魘されているので、それを改善するには冷やすのが一番いい。大きい布を濡らしきつく絞ると額に載せるが、短時間で熱くなってしまうので交換の回数が多い。
しかし、嫌な顔をひとつせず頑張っていく。
その時、部屋の扉が叩かれた。マナは音が聞こえた方向に視線を向けると、訪れた人物を出迎える。訪れた人物はリンダで、何でも解熱剤を持って来てくれたという。彼女も魘されているエイルの様子が気になっているのか、寝台の側まで行くと覗き込むように顔を眺める。


