それにメルダース入学前から徹底的に鍛えられており、あの時は相当ボロボロにさせられた。我が子だからという理由でフレイは情けを掛ける人物ではないので、エイルは生傷を全身に負った。
いい思い出であり、悪い思い出。
エイルは、溜息を付く。
「その反応は何だ」
「い、いえ……」
「不服か」
「滅相も……」
間髪いれずに、エイルは言葉を発している。フレイの迫力は半端ではなく、殺気だけで相手を殺せるのではないかというほど全身に突き刺さる。そして時折、深くグリグリと抉っていく。エイルは必死に絶えていく。此処で気絶してしまったら、父親に笑われてしまうからだ。
「行くぞ」
「何処で……」
「庭だ」
「草木、大丈夫かな」
「斬ったら、お前の責任だ」
優しい言葉が掛けられることはないが、決してエイルを嫌っているのではない。フレイは息子に期待しているからこそ、ついつい厳しく当たってしまう。これから息子は王室親衛隊の一員となるので、弱い親衛隊は不必要。前隊長の身分が関係し、必然的に厳しくなってしまう。
勿論、エイルは理解している。しているが、何処か弱腰になってしまうのが正直な感想だった。
「急げ」
「……はい」
椅子から腰を上げ、部屋から出て行くフレイ。扉が閉まると同時に、エイルはその場にしゃがみ込んでしまう。別に、自身の父親のことを苦手だとは思っていない。普段は、優しいからだ。
だが、別の部分が絡むと人が変わってしまう。それが今のフレイであり、完全に悪魔に近い。
「生きていけるか……」
無意識に呟いた言葉は、エイルの心情を見事に示していた。父親と勝負した場合、エイルは絶対に負けてしまう。今まで勝った経験が一度も無く、現在親衛隊の隊長シードもと互角に戦うことが可能だが、勝ったという話を聞いたことはない。それだけ、父親は強かった。


