その質問に、マナは口籠る。
話していいのか悪いのか――
いつの間にか、頬が微かに色付いていく。
何とも初な反応に、イルーズは微笑んだ。
「悪いことか」
「ち、違います」
「君は、大声が出せるのか」
「……失礼しました」
彼の指摘に、今度はトマトのような色彩が顔を彩る。マナは常に大人しいというイメージが付き纏うが、その人物がこのように大声を出す。イルーズは驚くと同時に、クスクスと笑っていた。
そのことが、更に羞恥心を誘っていく。マナ俯きこの場から逃げ出したい心情に駆られるが、相手はイルーズ。それを行ったら失礼だとわかっているので、懸命に羞恥心と戦った。エイルとイルーズは兄弟で、屋敷の主人の息子。そしてイルーズに対して、敬う心が強い。
しかし、エイルの場合は違う。イルーズとは違い付き合い易く、尚且つ自由に話せると思った。それにより、必然的に萎縮してしまう。結果、それが不恰好でぎこちない態度を生み出す。
その時、衝撃的な質問がぶつけられる。勿論、マナの思考が一瞬停止してしまう。それだけ、回答が困難な質問であった。どのような意味で、イルーズが言葉を出したのか。混乱している思考では、正しい意味合いを見つけることが難しい。その為、額が脂汗で濡れる。
「難しい質問をした」
「そ、そんなことは――」
「だが、君がいるとエイルは楽しそうだ。昔は、あのような感じではなかったからね。それは、嬉しい」
「えっ!」
「本当だ」
「有難う……ございます」
当初、気さくに付き合っていることを、指摘されるのではないかと思っていた。しかし反応は予想に反して優しく、寧ろエイルをどのように見ているのか詳しい回答を求めてくる。
的確に明確に回答することはできない。そもそも回答を述べた瞬間、機嫌を悪くしてしまうのではないかという恐怖心を抱いていたからだ。だから、質問に対しての回答を瞬時に決して述べようとはしなかった。強情とも取れるその態度に、イルーズは苦笑してしまう。


