いつか。
そう、いつか。
クローディアを守護している女神エメリスが、この状況を許しておくわけがない。女神は、法と審判を司っている。よって国の根底を覆した存在に裁きを下すが、いつかわからない。
だが、シードを含め味方側はそれを待つ。
待つのは慣れている。
それに、焦っていいことはない。
複雑な心境が、シードを覆う。
「……様」
シードが誰かの名前を呼ぶが、それは微かに囁いた声音。空中に霧散し、ハッキリとした単語にならない。しかし、それでよかった。シードが呼ぶ名前を、誰も聞いていないからだ。シェラの意識は別の世界に存在するので、シードの言葉がシェラの耳に届くことはない。
無意識に、溜息を付く。
そして再び、シェラの顔を見詰める。
シェラの外見は、人形のように可愛らしい。まるで、一流の職人が作り上げたかのようだ。
淡い紫の髪に、緑色の双眸。
そして、大理石のような白い肌。
12歳で、この外見と容姿。彼女が年齢を重ねた場合、どれくらいの女性に変化するのか。ミシェルが熱を上げる理由を理解できなくもないが、いかんせん両者の年齢の差が大きい。幼女に執着している、変態馬鹿公子。そう、陰口を叩かれていることをシードは知っている。
「お守りします」
シェラは希望。
ミシェルの馬鹿に、彼女を渡すわけにはいかない。
そう、改めて決意する。
そして再び、忠誠を誓う。
全ては、国の繁栄の為に――
シードがシェラの部屋にいる頃、リデルはフレイと会話をしていた。久し振りに城を訪れたフレイ。無論、周囲の反応がいいわけがない。特に敵側に回った者は、フレイの動きのひとつひとつに敏感に反応を示す。そして鋭い視線をフレイに向け、威嚇の行動を取っていった。