予想以上に素早いマナの動きに、エイルは服を脱ぐ途中で固まってしまう。普段、おっとりとした態度を見せているマナでは、信じられない身体能力であった。エイルは確かめるように、マナの身体を叩く。その瞬間、か細い悲鳴が長々と響くが何処かくぐもっている。
「マナ?」
「き、着替えを――」
「あっ! ああ」
一体、何を言いたいのか。
無論、エイルは瞬時に理解する。
今、エイルの状態は半裸という言葉が似合う。マナは、それを見るのが恥ずかしいということを態度で判断できた。エイルは苦笑しつつ慣れた手付きで着替えていくと、終了をマナに伝えた。
しかし、マナは動かない。
先程は、ブルブルと震えていた。
だが――
全く反応を示さないマナにエイルは首を傾げると、失礼とわかりつつも両手で布団を剥いだ。
刹那、エイルの絶叫が響く。
何と、相手が酸欠状態に陥っていたのだ。顔色が真っ青というわけではないが、身体の動きが鈍い。それに、シーツに顔を埋めている。エイルはマナをうつ伏せにすると、ペシペシと頬を叩く。
暫くした後、マナが目覚める。どうやら自身が酸欠で気絶していたことに気付いていなかったのか、瞼を何度も閉じたり開いたりを繰り返す。それと同時に、大量の酸素を吸い込んだ。
「エ、エイル様」
「無事?」
「わ、私……」
「酸欠で気絶」
「ま、また……」
エイルに迷惑を掛け続けているということに、気を落としてしまう。反省の意味を込めて寝台の上で正座すると、肩を落とす。明らかに、表情が硬い。それだけ、精神的ダメージが計り知れない。
マナの詫びの言葉が続く。しかし先程まで酸欠状態であったので、再び身体が酸素を求めてしまう。結果、徐々に前のめりで身体が倒れていってしまうが、途中でエイルに救われた。性格が短気の人物はマナの態度に腹を立てているだろうが、エイルは口許を緩めていた。


