それを知っているので、静かにフレイの愚痴を聞いていく。また、気苦労もわかっていた。語られている言葉の数々の裏側に、気苦労が見え隠れしているからだ。心労は、計り知れない。
しかし、ひとつだけ安心できる出来事が存在した。それは、エイルが親衛隊に合格したことだ。
代々、親衛隊の隊員を輩出している家系。
今回の件は、実に嬉しかった。
フレイは口に出すことはしなかったが、本心では喜んでいた。それにより、ホッと胸を撫で下ろしている。これにより代々続いている名門の一族の名前に、傷が付かないのだから。
勿論、イルーズも同等の心情を持つ。
それが関係して、社交界が苦手なエイルを影で支えなければいけないと思い考えていた。そして「香水が苦手」ということは、フレイに話していない。それが、イルーズの優しさだった。
しかし――
社交界には、数多くの悪魔が暮らしている
甘く見ては、逆に食われてしまう。
フレイもイルーズも、それを実感していた。
今回、周囲は「親衛隊」の文字で、盛り上げるに違いない。そう、噂は一瞬にして広がる。
社交界の情報網は、蜘蛛の巣になぞられる場合が多い。それほど複雑に張り巡らされており、噂が広がる速度が速い。そして、油断していると全ての上流階級の者達が知ることになる。
「今回は、煩いぞ」
「わかっています」
「しかし、何故――」
「父さん?」
「何故、噂好きが集まる」
「た、確かに」
フレイの言葉は、納得の余地があった。社交界に集まる全ての人間が、面白おかしく話を盛り上げていく。
妬み恨み嫉妬。
数多くの人間の負の一面。それが集中して集まった場合、どす黒い渦へと変化していく。それが社交界という場所で一気に花開き、何とも表現し難い色の花を咲かす。それは悪臭を漂わせ、人々の神経を狂わしていく。しかし、フレイとイルーズはそれに毒されることはない。


