「……そのオオトカゲネットワークだよ。それにこのネットワークの会員は、皆普通だったし」
「そうなんだ。じゃあ、報告決定」
フランソワーの背中を優しく撫でると立ち上がり、ラルフを見下ろす。
窓から差し込む陽光に照らされたエイルは何処か違う人物を見ているかのようで、まさに影の支配者に等しい。
背中から照らす逆光によって、顔は黒い色彩に包まれている。
それはエイルの漆黒な一面を浮き立たせ、本当の彼は此方ではないのかと思ってしまうが、ラルフは口にはしない。
したところで、いつもの“あれ”が、待っているだけ。態々、自分の身を危険に晒す必要なない。
「報告って、何もしていないぞ」
「一般の学生が裏ルートを持つ自体、普通は有り得ない。それに、フランソワーの輸送のことも相談しないといけない。これは、個人でどうこうできる問題ではないだろ? 輸送費は、幾ら掛かると思っているんだ。ラルフが、全額支払う能力があるのならいいけど。まあ、無理だね」
「やっぱり、高いよね?」
「メルダースからフランソワーの生息地まで、どのくらい距離があると思っている。人一人が、徒歩で行くわけではないんだぞ。オオトカゲだとなれば、それなりに危険が伴う。無論、料金は二割増だね」
「ねえ、エイル君」
「何かな、ラルフ君」
「お願いだから――」
その言葉と同時に、両手が差し出された。
ラルフが言おうとしていることは、すぐにわかった。「金を貸してほしい」と言いたいのだろうが、冗談ではない。
ラルフに貸すほど、エイルは豊かではない。
それに貸したところ、返ってくる見込みはなく、また貸す理由も存在しない。
「駄目?」
「駄目に、決まっている。僕だって生活費がなければ、やっていけないし。参考書を購入して、金欠なんだよ。お前と違って、真面目に勉強を行っているからね。まったく、お前って――」
「ねえ、俺達は――」
「それ以上言ったら、フランソワーに噛ませるぞ」
自分より強い者の命令は絶対で、尚且つフランソワーはエイルに服従している。
元飼い主のラルフでさえ、命令があれば容赦なく噛み付くだろう。
そのことを知っているエイルは笑みを浮かべながら、ラルフを脅していく。
ついでに日頃のストレスを発散させているのだろう、言葉に刺が含む。


