その考え方は前に聞いているので、マナは記憶していた。それでも、反射的に断ってしまう。「使用人」という立場は身体の奥底に染み付き、無意識にエイルとの立場の差を表面に出す。だが、エイルがそれを受け入れる訳がない。彼は徐にチーズを掴むと、マナの口に突っ込んだ。
「美味しい?」
「はひ!」
突然口の中にチーズを突っ込まれ、マナは息苦しかった。しかし懸命に咀嚼し、喉に流し込む。
そして何度も肩で呼吸を繰り返すと、目許に大粒の涙を浮かべエイルの顔を凝視してしまう。美味しいと判断する以前にとても息苦しかったので、味に関しては二の次になってしまう。
「……顎、痛いです」
「ご、御免」
流石に、これはやり過ぎであった。エイルは気まずそうにポリポリと頬を掻くと、マナの隣に腰掛ける。そしてマナに気を使うように、オズオズと目の前にチーズが置かれた皿を差し出した。
「お詫び」
「い、いえ」
「食べて欲しい」
「お、お腹は――」
言葉に反して、身体は正直であった。間延びして鳴るのは、空腹を知らせる音。それに伴い、マナの顔が紅潮していく。時間的に朝食や昼食の時間が終わっているが、先程の話を聞いていると、三食の食事を取っているかどうか怪しい。そして、メイド達の話も気に掛かる。
メイド達との約束があるので、エイルはマナに真相を聞きだすことはしない。それに今は、マナの空腹を満たすことが大切であった。その為、チーズを食べるように必死に進めてく。
「食べている間に、続きを話すよ」
「お話が、終わったら……」
「いいよ。気にしていない」
「……はい」
「じゃあ、全部食べよう」
エイルの好意を受け取ったマナは、チーズを手に取ると恐る恐る口へと運んでいった。すると今まで空腹を我慢していた影響か、マナはバクバクとチーズを食べていく。勿論、味は最高。それにより上品という言葉ではなく、がむしゃらに胃袋にチーズを納めていった。


