ロスト・クロニクル~前編~


「そういえば、マナの料理は美味しかったよ。個人的に、川魚の料理が食べてみたい。いいかな?」

「は、はい」

 急に料理のことに振られ、マナの頬は赤く染まっていく。夜食を――という約束で作っている料理。毎回「美味しい」という言葉と共に、全て平らげてくれる。やはり気持ちを込めて作っている料理、それを美味しく食べてくれることは嬉しい。エイルの素直な感想に、マナは微笑んだ。

「煮魚ですか?」

「何でもいい」

「が、頑張ります」

「有難う。で、話が逸れてしまったね。クローディアは雪が多い国だけど、他の国以上に発展している」

「はい。暮らしやすいです」

 農作物や酪農品は、普通に手に入ることができる。王都ベルクレリアの郊外では、数多くの牛や羊が飼育されているからだ。だが、普通の牛や羊ではない。寒い地域でも暮らすことができる、独特の形を持った家畜だった。それに、魚介類を食べなくとも普通に生きていける。

 一見、クローディアは暮らし難い地域と思われている。だが長い年月を持って、原住民が独特の生活スタイルと文明を築いていった。それにより、寒さ以外を除けばいい国だった。

 浪々と語っていくエイル。すると、マナの言葉がそれを遮った。一体、何か――エイルは、反射的に相手の顔を見詰めてしまう。突然の反応に、マナも反射的に視線を下に向けた。

「それ、腐っています」

「うん? ああ、御免」

「他の部分が、勿体無いです。ですから、腐っている部分だけ取ります。他は、普通に食べられます」

「そうだね。食べ物を大切にしないと」

「はい。その……ジャガイモは、美味しいです。茹でて、そのまま食べると甘味がありますので……」

「バターつけると、美味いよ」

「で、ですが……」

 日頃マナは、ジャガイモはそのまま食べている。勿論、塩やバターをつければ美味しいというのは知っている。しかしメイドの身分で、そのような物を勝手に食べていいのかと迷う。するとそれを知ったエイルは、今度一緒にバターでジャガイモを食べようと提案した。