ロスト・クロニクル~前編~


 しかし、エイルの手当ての仕方が上手かった。それは魔法の練習の失敗時に受けた怪我を、自身で手当てしているからだ。勿論、専用の医師は存在しているが、医者のもとへ行くと何か言われるので多少の傷は自分で手当てをしてしまっている。その為、素人ながら腕前は高い。

 手当ての終了と共に、マナは包帯が巻かれた指を見詰める。そして俯きながら、礼を言う。

「次は、注意しないと」

「迷惑を……お掛けしました」

「迷惑? それはないよ。それに、綺麗に部屋の掃除をしてくれたし。その礼だと思っていいよ」

 エイルの言葉に、マナは何も言えなくなってしまう。部屋の掃除はメイドが行っている仕事のひとつなので、このように褒められる内容ではない。だが、エイルはマナに感謝の言葉を発していく。現に部屋を綺麗に掃除してくれたことは、エイルにしてみれば有難いことだった。

「さて、皮むきやっていこう」

「はい」

「で、約束のことだけど……」

「約束……ですか?」

「ほら、勉強に教えるという約束」

「宜しいのですか?」

「約束は、約束だよ」

 ハッキリとそのように言うエイルに、マナは嬉しかった。勉強に関してリンダに頼みごとをしていたが、本当にそれが実行されるとは思っていなかった。メルダースに通っている貴族の気紛れと考えており、それが違うとわかった瞬間どのように反応をしていいのか迷う。

「どうした?」

「い、いえ。その……どのような、勉強をするのでしょうか。私は、あまり……一応、読み書きはできます」

「そうだね。地理は、どうかな?」

「地理……ですか」

「嫌い?」

「ちょっと、苦手です」

 それを聞いたエイルは、考えていく。地理に関しては、得意な相手に話す場合は楽だった。マナはクローディアから離れたことがないというので、クローディア周辺から話していくのが一番。そう結論に至ったエイルは、簡単にクローディアの地理について話していった。