まさに、最強の人物。
リンダの本気の攻撃を受けた場合、一気に体力を消耗してしまい頬がげっそりと痩せてしまう。エイルの語る内容に、マナは動揺していた。するとマナは何を思ったのか反射的にエイルの手を握ると、顔を近付けてきた。そして、何度も迷惑を掛けてしまったと謝り心配する。
「へ、平気だよ」
「で、ですが……」
「包丁、危ない」
「す、すみません」
「それと、手を握っている」
更に続いた言葉に、マナの顔はトマトに近い色へ変化していく。また、湯気が立ち昇る寸前に陥り、目許に涙を浮かべると瞬時に手を離す。それに続きマナは俯き、決してエイルと目を合わせようとはしない。自ら進んで異性の手を握った経験はないので、マナはパニックに陥っていた。
「マナ?」
「す、すみません」
「何も、悪いことはしていないよ」
「ですから、すみません」
「そんなに、謝らなくてもいいよ」
「はい」
マナは顔を紅潮させ、動揺の影響で声音が微かに震えていた。そんな彼女に安心して欲しいとエイルは微笑を浮かべると、そっと手を取った。勿論、傷の手当てをする為に手を取ったのだが、マナは勘違いしてしまう。それにより甲高い悲鳴を発し、身体をカチカチに硬直させてしまう。
「手当て、いいかな?」
「……はい」
「大丈夫。ちょっと、沁みるけど」
「が、頑張ります」
「そ、そうか」
傷の手当てだけに気合を入れるというのは何だかおかしいことだが、エイルは特に指摘はしない。それをしたら更に緊張感を強いてしまうので、エイルは無言で傷の手当てをしていく。
傷の深さは、幸い以前の怪我とは違い浅い。エイルは木箱を開き軟膏を塗っていくと、その上に傷口にガーゼを当てその上から包帯を巻いていく。手馴れた手付きにマナは「凄い」という感想を漏らす。彼女のその感想にエイルは、先程と同じように評価しすぎと言った。


