しかしマナは、過度の評価していく。彼女にしてみればエイルは有名なメルダースの生徒であり、自分とは違う世界で暮らしている。その認識が、少しの出来事でも大きく捉えてしまう。
だが、マナ自身メイド仲間が高い評価を下している。それに、仕事を完璧にこなしていた。職種や立場は、関係ない。現在行っていることを真面目にこなしているという時点で、評価に値する。それにエイルとマナは置かれている立場が違うので、それをひと括りで考える時点が間違っていた。
そのように、エイルは語っていく。するとその言葉にマナは大きく頷くが、元気が出た様子はない。それに対しエイルは軽く溜息を付くと、今度はマナが行った掃除や繕い物について語りだす。
「そ、それは……」
「僕は、無理だよ」
「ですが、きちんと繕ってありました」
「あれは、偶然だよ。それに、繕いには時間が掛かっているし。結構、難しかったりするね」
エイルの正直な感想に、マナは頬をほのかに赤く染めていく。今までこのように褒められたことがないので、過敏に反応を示してしまう。結果、油断が生じてしまった。何と包丁で、指先を切ってしまったのだ。反射的に指を口の中に入れると、苦い味が口内に広がる。
「大丈夫か?」
「平気です」
「見せて」
「い、いえ……」
「駄目だ」
小さい傷でも油断すると悪化してしまうことをエイルは知っているので、マナの手首を掴むと自身の目の前へ持っていく。指先に、血の塊ができていた。それはマナが言っていたように小さい傷であったが、エイルはポケットから取り出したハンカチで血を丁寧に拭いていく。
「よ、汚れます」
「構わないよ」
「しかし、血は落とすのに時間が……」
「そうなの?」
メルダースでは特別に調合された薬を使っているので、血液を落とすのが大変だということは知らない。その為、エイルは反射的に真顔で聞き返してしまう。彼のその表情に驚いたマナは、無言で何度も頷き返す。マナの反応にエイルは「しまった」という気持ちがないわけでもないが、表情に表すことはしない。


