「厨房へ行けばいいか」
「はい」
「有難う。行ってみるよ」
「あの……エイル様」
「何?」
「あっ! い、いえ……」
何かを言いたかったメイドであったが、瞬時に返ってきた言葉にメイドは戸惑ってしまう。しかし言葉を投げ掛けたからには言葉として示さないといけないので、メイドは口を開く。
「旦那様や奥様、イルーズ様は黙認しております。ですので、エイル様も……お願いします」
「これくらいで、怒ったりはしないよ」
「有難うございます」
「いや、いいよ」
そう言い残すと、エイルは厨房へ歩いていく。その途中、目的の人物――マナの姿を発見する。彼女は、メイド達が言っていたようにジャガイモの皮むきをしていた。それも、勝手口の近くで。マナの仕事風景を見たエイルは裏庭へ向かうと、軽い口調でマナに言葉を掛ける。
「捜した」
「エイル様!?」
「隣いい?」
「えっ!」
マナの返事が返ってくる前に、エイルは隣に腰掛けていた。そして何を思ったのか籠の中に入っていた包丁を手に取ると、エイルもジャガイモの皮むきをはじめていく。その行為にマナは止めてほしいと訴えかけていくが、エイルは聞耳を持たない。ただ、黙々と皮むきを続ける。
「これは、私の仕事です」
「別にいいよ」
「で、ですが……」
「籠の中に包丁が入っていたということは、誰かと一緒に皮むきをしていた。しかし、途中でいなくなった。違うかな?」
「……はい」
少ない情報で正確な答えを導き出したエイルに、マナは驚きと同時に動揺してしまう。流石、メルダースで学んでいる人物。マナは俯き、そう評価していった。それに対しエイルは、苦笑していた。彼にしてみれば、これくらいで褒められるものではないと思っていたからだ。


