身勝手な行動に機嫌を悪くしたのか、フランソワーがラルフを睨み付けてくる。
もはや飼い主ではなく攻撃対象と認識したのだろう、エイルの命令ひとつでいつでも飛び掛ってくる可能性が高い。
野生の生き物は、強いものに従うのが自然の掟。
どうやら飼い主であったラルフよりエイルの方が偉いと認識したらしく、今まで育ててもらった恩というものを感じないのかと思ってしまうが、オオトカゲにそのようなものを期待する方が間違っている。
この瞬間、ラルフは敵となった。
「お前を見捨てたようだ」
「のお! 今まで、育ててやったじゃないか」
「フランソワーは“恩着せがましい”と、言っている。いけないな、そんな気持ちの持ち主では。だから、人間の友人が少ないんだぞ。そんなことより、フランソワーは故郷に帰りたいそうだ。これを良い機会として、帰してやったら? こんなに、大きくなってしまったんだし。それに、卵が産まれたら大変だろ?」
「そ、そうだな」
メルダースが存在する地方はいくら暖かい場所といっても、フランソワーが本来暮らしている地方に比べたら寒い。
順調に成長しているといえども、このような生き物を飼っていいわけがない。
それに卵が産まれた場合、問題が発生する。
幾つ産むかはわからないが、かなりの個数を産むに違いない。
それらが全部孵った時、さぞかし賑やかだろう。
狭い寮の部屋で飼うことは無理である。
なんだかんだで今まで誤魔化してきたが、それも限界に近付いてきている。
人間の身長より大きいフランソワー。
もし人間に危害でも加えたら、本当に処分の対象になってしまう。
「と言うことだけど、どうかな?」
故郷に帰れるとわかった途端、尻尾を振り喜びをはじめた。
やはりラルフへの愛情が冷めてしまったらしく、懐く対象がいつの間にかエイルへ移っていた。
それを見たラルフはショックのあまり、その場にしゃがみ込みいじけてしまう。
そしてちょっぴり、涙を浮かべていた。
「まあ、自業自得だね」
「酷いよな。今まで、散々お世話してやったのに。所詮、生き物ってこのようなものなのか」
「ひとつ聞いていいか? まさかフランソワーも、裏山で拾ったとは言わないよな? いや、オオトカゲが裏山で生息しているのはあり得ないし……まさか、業者から購入したのか! お前の裏ルートは、信じられないほど広いからな。それに、例のオオトカゲネットワークという存在も気になるし。これって、闇の業者だったりしないよな。そうだったら、危険だぞ」


