ロスト・クロニクル~前編~


 メイド達は、互いの顔を見合す。そして瞬時に、マナが無礼な行為をしたのかと危惧してしまう。しかしそのような意味で、エイルがマナを捜しているのではない。そのことをメイド達に話していくと、彼女達は胸を撫で下ろす。そして口々に、彼女の評価を下していく。

 予想以上に高い、マナへの評価。それを聞いたエイルは目を丸くするが、同時に納得できた。頼んだ仕事以上の内容を、彼女はこなしている。それもどれひとつ取っても手抜きをしていないというのだから、メイドの鏡と表現するべきか。ますますエイルは、頭が下がる思いがした。

 マナの評価を聞いた今、エイルは約束事を果さないといけないと再度決意する。そう、勉強を教えないといけないのだ。彼女の学力は把握していないが、低くても高くても関係ない。要は、お礼がしたかった。だからエイルは、メイドの休憩室に視線を走らせつつ再度マナの居場所を聞く。

「で、マナは?」

「多分、ジャガイモの皮むきをしています」

「ジャガイモって、それはメイドの仕事じゃないと思うけど。うちでは、他とは違うのかな」

「いえ、マナだけが手伝っているのです」

「何故?」

「それは……」

 何か不都合な背景が隠されているのか、メイド達の表情が一気に曇っていく。再び顔を見合すと、エイルの耳に届かないように小声で喋っていく。その不可解な行動の数々にエイルは首を傾げると、一体何を喋っているのか尋ねる。しかし言い難い内容なのか、メイド達は躊躇っていた。

「その……詳しくは知らないのですが、何かお金を貯めているようです。ですから、多くの仕事をこなしているらしいです」

「そうなんだ」

「もし詳しく知りたいのでしたら、直接本人に聞いて下さい。その時は、私達が話したとは……」

「わかっている」

 本能的にエイルは、それをマナに尋ねていけないと察する。それに誰にも、話したくない内容をひとつやふたつは持っている。無論、それはエイルも同じであり、両親やイルーズに内緒の出来事を持つ。

 そのひとつは、ラルフという常識が当て嵌まらない人間との出会いだ。これを両親やイルーズが知ったら、どのような反応を示すか――想像に絶する表情が待っているのは、間違いない。それを思えば好奇心を満たす為に、マナの隠していることをあれこれ聞く必要はない。