気に入っている人物には、手を貸す。

 逆に、気に入らない人物は徹底的に潰す。

 よって彼女の逆鱗に触れた場合、この世界から消滅する。または、一家は路頭に迷うという。

 クリスティが知っている相手――

 それは、いい意味ではなく悪い意味で。

「クリスティ殿は、何と言っていた」

「……馬鹿の青二才」

「クリスティ殿らしい表現だ」

 その言葉に、フレイは苦笑していた。一方フレイの隣で立ち尽くしているイルーズも、同じように笑う。これ以上、表すに相応しい言葉は存在していないので、二人の笑いが続く。

 しかし、長く笑いが続くということはない。そう、話の内容にその者が深く関わっているからだ。

「メルダースに戻った時、クリスティ殿に報告しておくように。あの方の性格上、必ず関わってくる」

「無理矢理です」

「それが、あの方の特徴というべきものだ。しかし、お前には今以上に負担を掛けてしまう」

「いえ、学園長で慣れています」

 自由奔放のクリスティ相手に人生の教訓と厳しい一面を学習しているので、エイルはフレイが心配している「負担」と「負担」を思っていない。その為、大丈夫と言葉を放つ。フレイ以上にエイルを心配しているのは、兄のイルーズだった。それにより、本音を漏らす。

「大丈夫です」

「それなら、いいが……」

「兄さんは、兄さんの身体を第一に考えて下さい。顔色が悪いです。仕事が、忙しいのですね」

「それは、いつものことだ。しかし今回は、お前の方が心配なんだよ。そうですね、父さん」

「そうだ」

「何が、あるのですか」

 言葉の裏側に隠れている何かに、エイルは顔を歪めてしまう。そしてフレイが言った言葉に、眩暈を覚えた。その内容は、社交界の話。エイルはメルダースで勉学をしていたので、社交界に顔出しした経験はない。だがエイルは伯爵家の次男なので、いずれは参加しないといけない。