親衛隊の試験の終了後――

 アルフレッドは合格祝いという形でエイルを酒場へ誘おうとするが、エイルは間髪いれずに断った。

 誰が、アルフレッドと酒場に行くか。

 エイルは試験の最中から、アルフレッドに嫌悪感を抱いていた。相手は、人間を超越しているからだ。そして時と場所を選ばず、馬鹿笑い。また、目上の人物に平気で食って掛かる。

 まさに、唯我独尊。

 エイルはアルフレッドの言葉を適当に横に流すと、付き纏うアルフレッドを振り払い自宅へと戻って行った。

 そして、自身の父親と兄に経緯を報告していく。

 一見、冷静な面持ちを浮かべているエイルの父親フレイ。しかし時折、ピクっと眉が動く。

「……そうか」

「父さん」

「わかっている」

 エイルの説明に、イルーズが過敏に反応を示す。彼自身、エイルの言葉が信じられなかった。それにより、切羽詰ったという言葉が似合う表情を浮かべている。一方フレイは、間髪いれずにイルーズの制していた。熱くなってはいけない。感情の高ぶりは、判断を誤るからだ。

 だが、言葉に態度が伴っていない。フレイは長い溜息をつくと、机の上に両肘を乗せ手を合わせる。そして手の甲に顎を乗せると、獲物を狙う獣に等しい瞳をエイルに向けていく。

「お前は、相手が誰か知っているのか」

「学園長は、詳しいですから」

「……確かに。クリスティ殿は、世界情勢に精通している。それと同時に、強力な存在でもある」

「強力というより、最強です」

「……苦労しているようだな」

「ええ、色々と」

 過去に数回、フレイはクリスティと対面したことがあった。その時の第一印象というのは、今もハッキリと覚えている。誰もがひれ伏してしまう、圧倒的な威圧感。それを目の当たりにしたフレイは、恐怖心を抱いたという。流石、世界一強い魔女。冷たい汗は背中を伝い、決して彼女に逆らってはいけないということを学習した。実に彼女の性格は、わかり易い。