「いや、関係はある」

「何?」

「その意味、貴様も理解しているはず」

 男の言葉に、シードの表情が不機嫌なものへと変化していく。それを見た男は、喉を鳴らして笑う。その瞬間、後方で纏めている黒髪が揺れた。そして更に、淡々とした言葉を続ける。

「立場は、我々の方が上だ」

「何を言いたい」

「別に、深い意味はない」

 男の言葉は、明らかに何かが隠されていた。それを本能的に感じ取ったシードだが、口を開くことはしない。そう、新しい気配が近付いてくることに気付いたのだ。無論、相手も同じだった。

「……面倒だ」

 男は、ポツリと呟く。しかし、シードの耳にその声音は届かない。一拍した後、男は踵を返す。

 そして、歩みを進めた。

 食えない男の態度に、シードは舌打ちをしていた。

 だが、いつまでも引き摺ってはいられない。

 シードは、大切な役割を持っているからだ。