開始の言葉と共に、両者が動く。
だが、エイルの前で予想外の出来事が起こった。
剣で勝負を挑んでくると思っていた相手が、魔法を使用してきたのだ。まさに、突然のこと。しかしエイルは、冷静に対応していく。このような出来事は、メルダースでは日常茶飯事だった。
エイルは握っていた剣を水平にすると、刃の部分に指を這わす。同時に短い言葉を唱えていき、魔法の衝撃に備えた。相手が使用した魔法は火系の初級魔法なので、簡単な防御方法で魔法を霧散させることが可能であった。切っ先に魔法が当たった瞬間、防御魔法が発動する。
エイルは、剣を魔法の媒体とした。結果、切っ先を中心として向かってきた炎が左右に分かれる。
「何!?」
相手の言葉が響く。
明らかに動揺していた。
エイルが剣を持ち出した時、魔法を使用すれば瞬時に勝負が決まると考えていたのだろう、それが甘い考えであったことに気付く。エイルは、メルダースで高度な魔法を学んでいる。俄仕込みに等しい魔法では、歯が立つ訳がなかった。その為、反撃を食らってしまう。
魔法に対して魔法で攻撃。
それが一般的な反撃方法だが、エイルは物理攻撃に訴え掛けた。魔法を防いだ剣を納めると、瞬時に駆け出す。そして、相手が握り締めている剣を蹴り上げた。しかし、攻撃はこれで止まることはしない。今度は蹴り上げた足を振り下ろし、男の左肩に踵を落としていた。
刹那、鈍い音が響く。
まるで靴の中に鉄の板を仕込んでいるかと思われるほどの衝撃は、確実に肩を脱臼させる。
相手の絶叫が響く。
流石「黒エイル」と呼ばれている人物。真剣勝負を愚弄した者に、容赦ない制裁を与えた。
「魔法、何処で習いましたか?」
「か、関係ない」
「関係ないという言葉は、通用しません」
エイルの質問に、リデルが過敏に反応を示す。現在、唯一魔法を習得できる場所は、クリスティが学園長を勤めているメルダース以外存在していない。それにメルダースの卒業者というのなら、態々隠す必要はない。しかし、この人物は何処で習得したのか話そうとしない。


