ロスト・クロニクル~前編~


 一次試験は、親衛隊の人間が大半の者を省いた。二次試験は、アルフレッドが勝手に不合格者を生み出していく。その見事としか言いようがないやり方に、多くの者が我が目を疑う。

 予想以上の人数の集まりにシードとリデルは、当初試験は梃子摺ると考えていた。次々と、受験者が消えていっている。それも、アルフレッドという名の受験者の手によって――

 現在、受験者は六人。一名アルフレッドが戦闘不能にしてしまったので、実質的に五人。アルフレッドが我儘を言って強引に合格になっているので、その他の合格者は一名か二名か。どちらにせよ、油断は合格から遠ざけていく。無論、アルフレッド以外の受験者はそう思っていた。

 皆、真剣な目付きをしている。そして試験が開始されるのを待っているが、なかなか二次試験の続きが開始されない。それは二次試験の不合格者を会場から出すのと、アルフレッドが拳で破壊した壁の片付けに手間取っていたからだ。勿論、アルフレッドも手伝わされていた。

「……アルフレッド」

 せっせと破壊された煉瓦を運んでいるアルフレッドの姿に、エイルは顔を引き攣らしていた。エイルは、真面目な試験を期待――という表現は適切ではないが、それを前提に見紛えていた。

 しかしアルフレッドという空気が読めない無礼者によって、全てをぶち壊された。過去に一度、エイルは親衛隊の試験をフレイに連れられ見学した経験を持っている。その時に肌で感じたことは、会場は独特の張り詰めた空気に包まれていた。だが、今は別の空気が漂っている。

「申し訳ありません」

「いや、仕方ない」

「あの馬鹿が……」

「馬鹿?」

「いえ、隊長“馬鹿”は、正しいです。あのように壁を破壊して、平気な顔をしているのですから」

「……確かに」

 アルフレッドの行動に、周囲は微妙な空気が漂う。張り詰めたという言葉が似合わない雰囲気に、何とも表現し難い感覚に襲われる。エイルとシードとリデルは、同時に溜息をついた。

 冷静沈着と謳われている、親衛隊の隊長シード。そして、副隊長のリデル。その両者に想像以上の脱力感を与えたのは、アルフレッドが最初で最後だろう。一方アルフレッドは合格したことに有頂天と化し、鼻歌を歌いながら自身が粉砕した煉瓦を片付けていっていた。