いやこの場合、粉砕と表現した方がいいだろう。煉瓦で作られた壁に穴が開き、反対側が覗き見ることができた。親衛隊の面々と、受験者は衝撃的な出来事に言葉を失う。そして、一点を凝視していた。無論、彼等から言葉はない。それだけこの出来事は、想像を絶していた。
「貴様!」
数分後――
沈黙を打ち破るように、リデルの叱責が飛ぶ。その声音に、止まっていた時間が動き出す。一方アルフレッドは清々しい余韻にどっぷりと浸っているのか、なかなか現実に戻ってこない。勿論、二度目のリデルの叱責が飛ぶ。これにより、強制的に現実に引き戻された。
「お前の馬鹿力は、わかった」
「それじゃあ――」
「修繕をしておくように」
「えっ! 合格は――」
リデルが望んでいる言葉を言ってくれないことに、再び食い付いていく。しかしリデルは相手をするのが億劫になったのか、適当にあしらっていく。すると見兼ねたシードが、そっとリデルに耳打ちをした。それは、アルフレッドを合格にしていいという内容であった。
リデルは、間髪いれずに反論している。厚顔無恥という言葉が似合うアルフレッド。伝統と格式を持つ王室親衛隊に、このような人物を入隊させたとなったらいい笑いものになってしまう。だが、シードは適当に言ったのではなく、アルフレッドの並外れた体力を求めた。
筋肉馬鹿のアルフレッドは、ちょっとやそっとでは壊れない肉体美。王家の壁――それを肉体で、見事に再現してくれるだろう。馬鹿と鋏は使いようと言うが、シードはそれを現実に表現しようと考えていた。その説明に、リデルは納得する。確かに、彼はいい壁になる。
現在クローディアは、非常に逼迫した状況に置かれている。特に、王家の唯一の生き残りシェラを何が何でも護り抜かないといけない。アルフレッドをシェラに会わせるのは気が引けるが、今の状態を考えると我儘と文句を言っている場合ではないので、リデル渋々受け入れた。
「アルフレッド・ベイセル」
「何ですか……いや、何でしょうか」
ついついいつもの癖で、敬語が簡単に省略して喋ってしまう。目上の者を敬わない態度にリデルの眉が微かに動くが、冷静さを保っていく。そしてコホンっと咳払いをすると、アルフレッドに合格したということを伝えていった。刹那、周囲に動揺が走ったのは言うまでもない。


