ロスト・クロニクル~前編~


 しかし唯一、アルフレッドを止められる人物がいた。そう、その人物こそエイルであった。エイルもシード同様、彼も厳しい口調で語っていく。予想以上の迫力に、アルフレッドは戦く。だがそれはアルフレッドだけではなく、親衛隊の面々の他に受験者も同じだった。

「皆が、迷惑しています」

「い、いや……この場合……」

「いい加減にした方がいいです」

「ほら、結果が――」

「結果が、何ですか?」

 全身から放たれている、殺気に近いオーラ。シードとリデル以外はそのオーラに恐怖心を抱き、エイルが何者なのかと隣に立っている者同士喋っていく。無論、メルダースで「黒エイル」と呼ばれ、一部の生徒の天敵になっていることを知らない。だからこそ、憶測が生まれる。

 悪魔の使者。

 女神が使わした、破壊の申し子。

 人間の妄想力は、湧き水に等しい。

 結果、多くの単語が口を衝いて出る。

 だが、流石鈍感のアルフレッド。エイルのオーラを簡単に横に流し、そして反論していった。勿論、それは無謀以外の何ものでもない。それにより、間髪いれずに再度攻撃が来る。

「い、いいじゃないか」

「そうですか」

 我儘を続けるアルフレッドに深い溜息をつくと、エイルはシードに意見する。そう、不合格でいいと――

 その提案に、シードは同調するように頷く。どうやら、シードもエイルと同じ意見を持っていた。それにアルフレッドの唯我独尊っぷりを見たら、誰もがそのような答えを出している。

「不合格!」

「当たり前だ」

「そ、そんな」

「これ以上の意見は、却下だ」

「さ、最後に――」

 最後の足掻きというべきか、アルフレッドは何を思ったのか周囲を囲んでいる壁の側へ向かう。そして次の瞬間、拳で壁をぶち抜いた。無論、壁を拳で破壊するのは不可能に近い。何より壁の材質は、木材や石材ではなく硬い煉瓦だ。それをアルフレッドは、拳で砕いた。