エイルの回答に、アルフレッドが反射的に反応を示す。そして、小言で「そうなのか?」と、何度も尋ねてくる。目の前にシードとリデルそれに親衛隊の面々がいるというのに、関係ないとばかりにエイルに質問を繰り返していく。勿論、雷が落ちたのは言うまでもない。
「名前は?」
「俺ですか」
「他に、誰がいる」
「アルフレッド・ベイセルです」
「では、ベイセル君。君が――」
シードの言葉に何を勘違いしたのか、アルフレッドは勝手に合格したのだと決め込んでしまう。無論、親衛隊の一同が一斉に溜息をつく。一方シードとリデルの額には青筋が立っていたが、感情を荒げるわけにはいかない。シードは肩を竦めると、強い口調でアルフレッドに諭す。
「人の話を聞けないのか」
「い、いや……」
「私が言いたいのは、試験を再開したいということだ。それをわかってもらいたいものだが」
血の通っていない冷たい言葉に、アルフレッドは身体を震わす。それと同時に、背中に何かが流れ落ちた。流石、親衛隊隊長というべきか。その圧倒的な威圧感に、完全に服従を決意した。
アルフレッドの相手――それは、二十代前半の男。外見はアルフレッドより痩せていたが、外見だけでは判断できない。要は、アルフレッドが一般人以上の筋肉を持っているからだ。
剣と剣の勝負。
無論、互いの技の勝負を全員が期待していた。
だが――
勝負は、一瞬で決まってしまった。
そう、アルフレッドが相手を殴り倒してしまったのだ。それも、鞘に収めた剣で下腹部を一撃。
その瞬間、鈍い音が響いた。
「何を……」
衝撃的な光景にエイルはポツリと呟くと、ガックリと項垂れてしまう。一方リデルは顔を手で覆い、長い溜息を付く。またシードは珍しく目を丸くし、固まっていた。過去の親衛隊の試験の中で、一撃で相手を気絶させたという事例は記録に書き記されている。しかし、鞘で殴ったのは前代未聞。それに相当の衝撃を受けたのか、相手は口から泡を吹いていた。


