「どうした?」
「……いえ」
「相談に乗るぞ」
それは何気ない一言であったが、エイルの癇に障る。そもそもアルフレッドが側にいなければ、エイルの機嫌も悪くはなかった。彼は感情的に騒ぎ、決して自ら回答を導き出そうとしない。
そしていい加減で怠け癖が激しい人物が、王家を守護する役割を有している親衛隊の試験を受けに来た。正直、一次試験で不合格になった方が世の中の為であったのかもしれない。
それが何かの手違いで、二次試験に行ってしまった。それに次の試験はアルフレッドが得意としている分野なので、下手をすれば合格してしまう。そして、親衛隊の一員になってしまったら――これは女神が決めた筋書きか不明であるが、エイルは内心女神を恨みそうになってしまう。
同時に、何が何でも合格しないといけない。
筋肉馬鹿に、負けた。
それは、屈辱以外の何物でもない。
それにアルフレッドが合格しエイルが不合格の場合、比較対照となってしまう。誰も、筋肉馬鹿と比べられたくない。比べられたら一生の傷として残り、深く身体を抉っていくことになるだろう。結果、気合が入っていく。今なら、上級魔法も簡単にぶっ飛ばせる勢いがあった。
「アルフレッドさんは、剣ですか?」
「うん? おう! そうだ」
「強いですか?」
「どうかな」
「……弱いのですね」
「弱くない!」
「其処、煩いぞ!」
アルフレッドの言葉に重なるように、リデルの凛とした声が響く。鋭く凛とした声音にアルフレッドは萎縮してしまい、素直に頭を垂れた。美しい女性に弱いという弱点を持っているアルフレッド。何ともわかり易い反応の仕方に、横でエイルは深い溜息をついてしまう。
刹那、リデルの表情が変化した。そう、アルフレッドの横にいるエイルに視線が行ったからだ。しかし瞬時に、もとの無表情へと顔面の筋肉を戻していく。今、再開を懐かしむ時ではない。それにフレイの後を継いで親衛隊の一員にならないといけないことは、以前から決定していた。それを考えると、エイルが試験を受けに来ることは何らおかしなことではない。


