「どういうことだ」
「簡単ですよ」
口許に微笑を浮かべると、アルフレッドだけに届くように小声で囁いていく。そして、告げた。親衛隊の試験は、集合の時点から開始していると――
語られる内容に、アルフレッドは口を半開きにしてしまう。そして、どうしてそのように思うか尋ねた。
「これだけの人数の知力を測るテストを、どのようにやるというのですか。一枚一枚、専用のテスト用紙を渡すのですか? それをやったとしても、回答に時間が掛かってしまいます」
「そうだな」
「それに知力というのは、椅子に座って学ぶことだけで図れません。そう、瞬間的判断能力も知力のひとつです」
「ああ、そうか」
「わかりましたか?」
「お、おう」
「……動き出しました」
これにより、第一次の試験で大半の者達が削がれてしまう。そう全て、男の言葉に同調してしまった者だ。その者達はシードとリデル以外の親衛隊の面々に連れて行かれるが、彼等は何が起こったのか理解していない。中には唖然とした表情を浮かべつつ、引っ張られている者もいた。
「質問いいか?」
「試験の意味ですか?」
「まあ、そうだ」
「構いませんよ」
別に隠す理由も権利も持ち合わせていないので、エイルは淡々と試験の説明をしていくのだった。このことを学んだのはメルダースであり、相手はあのクリスティ。彼女は空気を読めない人間は嫌っており、常に先読みを強いられる。最強の魔女相手に学習した、世の中の摂理。
しかし親衛隊の一員に加わりたいと思うのなら、これくらい出来て当たり前であった。そして、大声で叫んだ男――それは、親衛隊の一員であろう。彼が多くの受験者の心理を煽り、動揺を誘ったのだ。そして彼等がどのように動くのか、シードとリデルは観察していた。
兵士が、敵からの偽りの情報に簡単に踊らされてはいけない。下手をすれば。甚大な被害を被ってしまうからだ。一見簡単なやり方であるが、兵士としての素質を見抜くには有効だった。的確に物事を分析していくエイルに、アルフレッドは目を丸くするしかなかった。


