ロスト・クロニクル~前編~


 その者の外見は、二十代後半。

 そして、名前はシード・エインセル。

 この者は、王室親衛隊の隊長の地位に就いている人物だ。

 一見、優男というイメージが強い。そしてアルフレッドと比べ筋肉隆々という身体の持ち主ではなく、どちらかといえば線が細い。しかし、見た目と内面が違うという言葉はシードの為にあるようなもの。彼の剣の腕前は高く、師匠のフレイを除けばクローディアの中で最強といって過言ではない。

 茶色の髪は短く切り揃え、赤茶の瞳には強い意志が秘められている。前隊長のフレイの意思を受け継ぎ若くして隊長の地位に就いているだけあって、纏う雰囲気はリデルと明らかに違う。

 シードが、表舞台に姿を見せることは滅多にない。大半の仕事は副隊長のリデルがこなしており、このように姿を見せる時は深い理由があってのこと。そう、間違いがなければ――

「シェラ……様」

「どうした?」

「まさか、隊長が出てくるとは思わなかったのです」

「そんなに、凄いのか?」

「聞いた話によりますと、今まで隊長が姿を見せたことはないといいます。ですので、今回は……」

 エイルは一度、フレイから聞かされていた。シードは親衛隊の隊長と同時に、シェラを守護する任に就いていると。だが、シェラがこのような場所に来るとは思えない。彼女が姿を見せた場合、大事が発生してしまう。それに、下手に姿を見せると不安を煽る要因となる。

 なら、何故――

 疑問点が多い。

 王家の内情に、何か問題が発生しているのか。シードの登場にフレイが試験の為に呼び戻した理由が、徐々に判明していく。試験を受けるのならメルダース卒業でもいいのだが、フレイは今を選んだ。

(父さんは……)

 フレイは物事を先読みし、行動している。その結果が、今の状況に至っているだろう。そして、代々親衛隊の隊員を輩出しているからエイルが選ばれたというのは、建前上の理由か。

 その点はフレイではないので、エイルが判断することはできない。それにフレイに聞いたところで、回答は得られない。今は親衛隊の試験を受け合格を目指すのみであり、後の出来事はその時に考えればいい。それに、後々に後悔を残してはいけない。無論、それは父親の請け売りだ。