何故、試験を受ける前から疲労感を感じないといけないのか。エイルは、アルフレッドとの出会いを激しく後悔していく。そして、自身の運の無さを嘆いてしまう。メルダースでラルフに出会い、今はこのような人物に絡まれている。この先、一体何が待っているというのか。
まさか、試験が不合格――
様々な思いが、脳裏を過ぎる。
そして、溜息が出た。
「どうした?」
「アルフレッドさんには、関係ないです」
「な、何だよ」
目的地へと急ぐエイルの後を、アルフレッドは恋人を追いかけるように駆け足で続いて行く。手を伸ばし懸命にエイルの身体を捕まえようとするが、エイルは寸前で器用に避けつつ逃げて行った。そしてそのような愉快なやり取りを続けながら、二人は目的地へ向かった。
◇◆◇◆◇◆
エイルとアルフレッドが向かった場所。其処は、王室親衛隊が使用している訓練場であった。親衛隊の面々が使用していない場合、静けさに包まれている。しかし、今日は予想以上に賑やかで騒がしい。それは、多くの男女が親衛隊の試験を受けに集まって来ていたのだ。
「おお、凄い」
「気楽ですね」
「そうか?」
「でも、羨ましいです」
それが、エイルの心情であった。アルフレッドは、自分が選んで親衛隊の試験を受けている。
一方、エイルは――
自分が望んで選択したといったら、嘘になってしまう。大半は、一族の名前に泥を塗らない為に受ける。両者の立場があまりにも違い過ぎるので、エイルはポツリと本音を漏らしていた。だが、アルフレッドの耳に届くことはない。何故なら、目の前に広がる光景を魅入っていたからだ。
エイルは当初、そのように判断していた。一拍した後、それが違う考えだと気付く。アルフレッドが、ボキボキと手を鳴らしていたのだ。それを見たエイルは、反射的に間を取ってしまう。アルフレッドが行っている姿はまるで、喧嘩を行う人物に等しく思えたからだ。


