「な、何でいるんだ!」
「別に、いたって構わないだろ」
「まあ、そうだね。まさか、フランソワーちゃんが一緒だったとは。あれ? どうしたのかな」
完全に、怯えているフランソワー。
他のことに関しては鈍感なラルフであったが、ペットに関しての勘は鋭い。
何かに怯えている姿とインク塗れは、エイルが関係している。
そのように答を導き出すと無謀ながらエイルに食って掛かってくるが、勝負は一瞬にして決着がつく。
「フランソワーちゃんに、何をした!」
「ああ、ちょっとね。おいたばかりするから、お仕置きをしただけだよ。躾は、きちんとしないといけない」
「酷いな。フランソワーちゃんは、大人しい生き物として有名だよ。それに、頭はいいんだ」
「へえ、書き途中のレポートを食っても?」
「誰の?」
「僕のに、決まっているだろ! お前のフランソワーが、レポートを全部食ってしまったんだ。あれを期日内に提出しないと、セリア先生の雷が落ちるんだ。どう責任とってくれるんだよ。お前のペットだろ? それとも、お前が代わりにセリア先生に怒られてくれるというのか」
その台詞に、ラルフの時間が止まってしまう。
何度も「レポートを食った」と呟き、愛するペットが行ってしまった行為を、懸命に受け止めていく。
まさか、選りに選ってエイルが書いているレポートを食べてしまうとは――不運としか言えない。
いや、この場合は地獄だ。
「怒っている?」
「怒っていないと判断する方が、凄いと思うけど」
「やっぱり」
「当たり前だ!」
徹夜でレポートを仕上げていたということは、ラルフは知っている。
知っているからこそ、素直に受け止めないといけなかったのだが、“愛する”という思いが先頭に立っているので、ラルフはフランソワーを庇ってしまう。
それにより、エイルの機嫌が悪くなってしまう。
「でも、貴重な本を食べるよりはいいだろ?」
このような性格の持ち主であったとしても、図書室に保管されている書物の価値は認識しているようだ。
だが、言い訳は許されない。
書き途中のレポートは、エイルにとっては貴重そのもの。
毎回、レポートを期日ピッタリに提出しているエイルにとって提出が遅れることは、不名誉そのものだった。


